第236回 『乗虚而入』



「伝令、沂水も引き入りました!」

  「水位、更に一尺上昇!」

  「第五隊、ただちに高地へ避難を開始します!」



「監軍だ! 一体あれは誰の仕業だ!?」



「下邳以南の三城で略奪を行った者は誰だ!?」

  「第三軍、略奪を行う者はすべてその場で切り捨てろとの主命がありながら、お前たちが愚行を働くとは!」
「真っ赤な言いがかりだ! 我軍は軍紀に厳正だ、そのようなことするはずがない! 同じ轍を踏むものか、どうせまた盲夏侯の仕業じゃないか!?」(?)

「呂布が下邳に封じ込められ、徐州の各地で乱が起き始めている」

「下邳の城内の連中、今頃ビクビクしているぞ」
「お前は目なら見えるか。内情はどうなっておる?」



曹操「ふ、忘れておった。気にせんでくれ」

夏侯惇「はは、視ることは叶わんが、感覚で分かる」

    「阿瞞、お前の勝ちだ」



「実に美しい一戦だ」

建安3年(198年)11月、曹軍は深い溝を掘り、泗水および沂水を決壊させ下邳城に引き入れた。
下邳一帯では大波が逆巻き、城は押し寄せる洪水に浸った。

「これで数ヶ月分の兵糧です」



呂布「南方の三城の兵糧を奪ってきたのか」

陳宮「はい、早々に持ってこさせました。この三城は民が多く兵が少ない。どうせすぐにも投降してしまうでしょうから構わんでしょう」

   「それに、彼らがひとたび降れば、曹操は他の城への宣伝のためにも、必ず投降者たちを寛大に受け入れるはず」

   「もしその他の城が続いて奴に降伏すれば、その毎に曹軍の備蓄は消耗される」

呂布「さすがは一級の知者だな、陳宮」



   「お前が用意したこれだけの兵糧があれば、備蓄には十分だ。長きの篭城にも耐えうるだろう」
陳宮「しかし、目下憂慮すべきは城内の兵力不足です。雨季の後では包囲を突破するのは難しいかと」

呂布「昨日、小沛の陳家も曹操に投降した」

陳宮「存じております。おそらくこれもまた、司馬懿の仕業でしょう」
呂布「孤立無援か、陳宮よ・・・・・・」

   「この事態・・・・・・すべてはこの俺が起こした浅慮な行動に責がある。許せ」



陳宮「主公、袁術は曹操と盟を結んでおりますが、私が確信しますに、彼は荀彧にいいように言い包められているだけに過ぎません」
   「言うなれば、これは一方がなくなれば他方も危うくなる状態。もし我らが亡びれば、袁術は曹操と対立せざるをえなくなるでしょう。そのことに気づいていない」

呂布「だが、奴らは盟約を結んでいるのではないか?」

陳宮「これには実は面白い点がございまして」

   「曹軍と盟を結んでいる」
   「盟を結んでいるのは『曹軍』と、です」



   「主公、あなたにはこの意味がお分かりですかな?」

呂布「成る程な」

陳宮「もう一度寿春に人をやりましょう」
呂布「いいだろう」

「つまり大人の目的は、呂布を滅ぼしたその後・・・」



劉備「私から皇上へ、漢のために袁術の排除を奏上させるつもり・・・ということですかな?」

荀彧「然様です。皇上はずっと袁術の謀反にひどくお心を患わされておられる。皇叔からの一言があれば、事は自然に流れましょう」

   「皇上の下旨さえあれば、皇叔の一切の軍需はすべて我らが負担します」
   「忘れなきよう。袁術が盟を結んでいるのは『曹軍』とだけです」



   「決して『漢』と結んでいるわけではありません」

関羽「彼が小沛で包囲されていた我ら兄弟を此処まで送り届けに来たのには、何か裏があるとは思っていましたが・・・」(?)

   「なかなかのやり手ですな。よもや端からすべて計算づくだったとは」
   「大哥は名声が大きい、そのうえ皇族でもある」
   (※ここは本来は『絶対の真理である』という句ですが、
    意味が繋がらなかったので省略)

劉備「そうだ」



   「これこそが、曹操が我らを此処に留めおく最大の理由」

張飛「成り行くように大哥を誘い込んだのか。やられたな」

関羽「大哥、あの男は深謀遠慮です。恐らく更にまだ手を隠し持っていることでしょう」

(関羽?)「私は、このままいけば一切すべてが彼らの策略の内となってしまうのではないかと、そればかりが気懸かりでなりません」
劉備?「残念ながら、今の我らには奴らの手の内を読む術はない」



劉備「曹操は兵法軍略の才に長けている。そしてその配下にはこれまた有能な者がひしめき合っている」
   「すでに擁している荀彧、郭嘉はもちろん、今回加わった賈詡も、みな一級の謀士だ」

   「お前たち二人は、確かに武力は呂布に引けをとらぬとはいえども」

   「お前たちの武を生かし補佐すべき軍師がいない」

   「これでは、魚が浅瀬で当てもなく彷徨うようなもの。事を為して十分な成果を挙げるのは難しい」

「ふぅ! やれやれ、ひどい雨だなこりゃ!」



張飛「遅いぞ」

燎原火「悪い悪い、水位が急上昇して道が塞がったものだからさ、迂回して来たんだよ」

劉備「子龍、首尾は?」



燎原火「劉表大人は主公および二名の無双の武人に非常な期待をよせており、一日も早くお会いされたいと」

関羽「それはよかった。これでこの先たとえ何が起ころうとも、我らの退路も確保できたな」

劉備「義弟たちよ、天下の覇主とは才を求め渇望するもの。無論我らに置いてもな」

   「ところで私の求む才の方は、どうであったかな?」

燎原火「はい、私が以前主公に推挙したかの人物――」



    「臥龍先生は、隆中において主公をお待ちしております」

張飛「八奇中・・・」
関羽「最も評判の高い奴か?」

劉備「では、何故彼はここへ来ない?」



燎原火「それが申し上げると少々奇妙な話なのですが、先生は『袁術を打ち破るのは、主公ならば可能だろう』と、ただそう言われました」

関羽「な・・・・・・奴はすでに読んでいると?」
張飛「は! 面白いじゃねぇか!」

劉備「ならば、彼は私が曹操方にそう長く留まらないということも、予測済みということかな?」

燎原火「はい、それはもう明確に」
劉備「はは、隆中か、荊州の沔水のあたりだったな」



   「やはり、水は一方にあるか」







あ、もう一個の川もちゃんと決壊してら。
それにしても訳しにくい。話言葉にしにくい。
あと久々に主人公! あれ?同じ陣営内ならもしや司馬チューにも会うんじゃね?
ついでに四奇さんと顔合わせたらにわかにリトルウォーズが勃発しそうです。笑

そして今回も光明様はブラックでございました・・・どんどん染まっていく。
・・・ナナッキーィィイ!!(ついに)

今回の私的ベスト台詞

燎原火「ふぅやれやれ、ひどい雨だなこりゃ!」

07.11.10