第238回 『父女闖開』 すでに春草萌ゆる季節と知りながら、なおも無情に雨夜は来る。 往日的留得住、還是已被風雨蓋?(昔日は引き止めうるのか、それとも既に風雨に蓋されたのか?)(?) 「最新情報だ。呂布の第八軍が三城を率いて投降したぞ・・・ゴホッ」 「野草がついに取り除かれたか。これで呂布は遊軍を失ったな」 「もうすぐ・・・・・・ゴホ、ゴホ・・・もうすぐ俺たちの・・・ゴホ!」 賈詡「今は休め。でなければ春になった時に、俺がお前の墓前で草むしりをせねばならん羽目になる」(?) 郭嘉「そうだな。では早いところ体調を万全にして、この戦の結末を観るとしようか」 賈詡「結末か・・・俺にはむしろ面白い物語の幕開けに見えるがな」 「疲れ衰えた虎が死ねば、外にいるかの狼が暴走をはじめる」 「お前は第八軍を投降させたのが誰だか知っているか?」 郭嘉「ということは・・・」 賈詡「早く病を癒すことだ。さもないと功労を全部司馬懿に持っていかれるぞ」 高順「最も長く主公に追従していた第八軍までもが降ったとは・・・予想外だった」 張遼「これで我らを支援できる者は、残すところ袁術のみとなったわけか」 高順「奴の話をするな。奴だって明らかに援軍を引き伸ばそうとしている輩じゃないか」 張遼「それも仕様がないさ。目下のこの状況では、みだりに兵を発するのは確かにかなりの危険を伴う」 「俺はとりあえず荀彧に感づかれやしないか、それが心配だ。またあいつに出てこられたら、こっちが危ない」 「お、来たぞ」 高順「状況はどうだ?」 曹媛「いい? あなたのお父様は天下で一番凄い人よ。あなたは娘として・・・・・・」 呂姫「二番目の母様も怖がらずにね。父様は絶対すぐに戻ってくるわ」 「取り乱したりちゃだめよ、他の人たちによくない影響になるからね」 曹媛「ええ、分かっているわ!」 「私はただ・・・ただ・・・」 張遼「主公がついにあの馬まで出してくるとは」 呂布「行くにしても帰るにしても、こいつが一番早い。今使わずにいつ使う」 張遼「主公、やはりここは俺が・・・」 呂布「駄目だ。お前より俺の方が騎馬術に長けている。囲いも簡単に突破できるだろう。それに、今回は俺が行かなければ意味がないのだ」 「陳宮の遊説を聞けば、袁術もきっと事態を重く見るはず。絶対に俺に対し馬鹿な真似はせん」 「我等の誠意を示して袁術の疑念を解くためには、俺が自ら行くしかあるまい」 「援軍の確約さえ手に入れれば、我らは両軍で挟撃をしかけられる。さすれば必ずや曹操を徐州から駆逐できよう」 「ピュゥッ」 兵「ばか者、五人がかりでなければ手に負えぬと言わなかったか!」 兵「しっかり手綱を引き締めろ! こいつを放すなよ!」 呂布「俺にはこの馬がいる。そしてこれに戟があれば・・・」 「天下に、俺の敵がいるか?」 「行け。ちびを呼んで来い」 「もう少しきつく結べ」 曹媛「呂布、あなたも何か言って。この娘が怖がらないように」(?) 呂姫「二番目の母様も早く行って。お腹にいる小さな呂布に風邪を引かせちゃ駄目よ」 兵「城門を開くぞ! 皆下がれ!」 兵「お嬢様、どうかお気をつけて!」 呂姫「分かっているわ」 兵「水が来たぞ、気をつけろ!」 呂布「ちびすけ・・・」 「お前は父を恨んでいるか?」 (小さな両手は、さながら十本の棘のごとく、俺の鎧を穿たんばかりにしっかり掴んで放さない) (そうだ、この子供はもうすぐ俺と離れることになる。) (理性では、一心不乱に道を急ぎながら、) (感情では、父娘としていられる最後の時間を噛み締めている。) (時間とは長く、また短い。俺は懸命に前へ進む。) (しかし心は却って深く沈み行くばかりだ。) 呂姫「ゴホ! ゴホ!」 呂布(俺は、たった一言だけ娘に問い掛けた) (そして、この一歩を踏み出した) (この子は何も答えず、ただしっかりと俺に抱きついた) (そうして、急激に上昇する!)(?) 「起きろ」 (この一瞬、また感情のない一面に戻る) (俺は今からこの夜空の下に一条の血の線を描く) (ただしこの一線が、逆に父娘唯一の繋がりとなる) 呂姫「恨んでない」 呂布(彼女もただ一言だけ) 呂姫「ちっとも恨んでなんかないわ」 「私は呂家の娘」 「父様と一緒に戦場に赴くことができたんだもの」 「私にはもう、思い残すことなんてない」 俺は振り向かなかった。 熱いものが目を満たし、地上に揺れる勁草を見た気がした(※) ※疾風に勁草を知る・・・困難に直面してはじめて意思の強いことが分かるたとえ |
やっば。泣きそうだった。冒頭好きすぎるかっくんと四奇さんが出てきてめっさ喜んでいたけど、この父母娘の会話に泣きそうになった。なんていい娘なんだ・・・!涙 おませさんで健気で気丈ないいちびすけ・・・きっと呂布ちんも感無量。 来週が恐ろしいよ・・・背中ってあたりが余計に不安。呂布ちん、大丈夫・・・だよね? 呂布ちんは歴史の流れ上仕方ないとしても、せめてお嬢ちゃんだけは! 曹媛ママのためにも・・・!! 今回の私的ベスト台詞 →賈詡「今は休め。でなければ春になった時に、俺がお前の墓前で草むしりをせねばならん羽目になる」 かなり誤訳感プンプンですが、この珍訳ぶりに我ながらツボった。 郭嘉さんの墓の前でイッショケンメ草むしりに勤しむかっくん。うむ、悪くない。 07.11.26 |