あとがき. ここまで読んでくださった方々、ありがとうございます。 この『聞き人』は恥ずかしの処女作であります。当時私の周りで小説を書くというのがちょっとしたブームになり、それまで漫画一辺倒だった私も興味本位で書いて友人におしつけしかも授業中に読ませたというパワハラものの代物です。若かったんだ…。しかも懐かしの3.5インチフロッピーからUSBにデータ移行する途中で壊れたんです。3.5インチとか時代を感じますね。 それまで文章を書くというのが一切苦手だったもんで、放り投げず完結させただけで私的偉業(当時)でした。実はシリーズ化しようとしてたのはナイショ。多分今後書くことはないと思うのでここでお焚き上げ供養します。 ●聞き人 霊のカウンセラー的存在。 この世に留まっている幽霊というものは、総じて何かしらこの世に『思い』を残している、とここでは仮定してます。 その『思い』を断ち切らないかぎり、幽霊は成仏できない。断ち切らせるために、悩める幽霊の声を聞いてあげるのが、『聞き人』の役割という設定です。 「何かして欲しいことがある」という場合には、やってあげると約束します。それができることでもできないことでも、とにかく約束してしまう。そうすればこっちのもので、安心して一度道に戻った幽霊には約束遂行を知る術はありません。たとえ約束を破っても報復はない。差し障りのないことであれば、後味が悪いのでやってあげるのが大体ですが、誰かを殺してくれとかは到底無理なので、知らん顔します。大抵そういう悪い願い事していく幽霊は、一度正しい道に戻るとちゃんと冥府で裁かれるので、彼岸やお盆に帰って来るころには魂が洗い清められています(仮定)。 『聞き人』は複数いて、当代は鹿人を含めて五人います。彼らにはそれぞれ管轄があって巡っていますが、ちゃんと実家もあり、更に総家があって、関係者(殆ど親戚)が年に数回集まります。 ●鹿人 姓は佐竹です。鹿人は仮名、真名は不詳。 「かじん」という名前は、実はある日の夢の中で、誰かがそう叫んでいたのが元で、起き抜けに「鹿人」という漢字が思い浮かんだので、鹿人はかなり早い段階で名前が決定してました。 年齢は17歳くらい。作中では無性的な印象で描きますが、一応男児です。 『聞き人』としての能力は並。可もなく不可もなく。ただし呪歌に長けています。 身体能力は高くはありません。霊に対する抵抗力や防御力、攻撃力といった術系は全然ダメ。 総合的に『聞き人』たちの中では最も弱く、できそこない感が漂っていますが、本人は今ではあまりそのあたりに関心はありません。 ただ死んだ父親が歴代『聞き人』のうちでも最高といわれた傑物だったので、比べられることに若干コンプレックスを抱いています。父親をものすごく尊敬しているからこそ、彼の息子に見合うだけの力を持てない自分に失望しているという裏設定でした。 ●防人 『聞き人』は先天的能力なので、幽霊を『視る』ことと『聞く』こと、『声』で鎮めたり宥めたり浄めたりはできますが、身を守る術力の方には必ずしも長けてはいません。訓練次第である程度どうにかなりますが運動神経と同じで個人差あります。 一方で『聞き人』の身は常に危険に晒されています。いつだって聞き分けのいい幽霊にあたるとは限らず、力が強ければ強いほど、『聞き人』の『声』の効力が弱くなります。 更に次代『聞き人』は『聞き人』の血でしか産まれないこともあって、希少な『聞き人』の存在は何が何でも守り抜かれなければなりません。 そこで一人の『聞き人』につき、一人の術者が『防人』として護衛につきます。『防人』は総じて身体能力に優れ、同時に高い霊能力と、それを駆使する術を身につけています。そういう才能がある者を小さい頃から専属SPとして訓練します。 多くは実家で一緒に訓練され育てられた幼馴染とか、そうでなければ総家の方で養成された人間が『防人』に選ばれますが(選択権は『聞き人』当人にある)、鹿人の場合は特殊で、人間ではないモノを『防人』にしました。 ●篁 篁は鹿人の実家の祠に昔から祀られているモノです。しかし祀られているからといっても神さまというわけでもなく、どちらかといえば妖寄り。鹿人は完全に物の怪扱いをしていますが、実際そのあたりの境界は曖昧です。 篁という名前は鹿人がつけたもので、今は鹿人を主として付き従ってます。本来決まった姿はありませんが、具現する時は狐の形をとります。更に人型を取ると髪の毛がまっきんきんになります。どんなに白髪染め使っても染まらないというよく分からない設定がついてました。 周囲に(カマ)イタチと思われることが多く、彼のことをイタチと言うと怒ります。力だけは半端なく強いので、鹿人は当代どころか歴代一、二を争うくらいスゴイ『防人』をつけたと評判になってます。 しかし人外の、それも年月を経たモノを『防人』につけることは、霊能力の高い優れた『聞き人』でも滅多にないことで、当代どころか歴代でも稀なくらい霊能力に乏しい鹿人が、篁と契約を結んだことに、実家のみならず総家でも騒然となりました。一応馴れ初め話があったのですが、かくれんぼしてたら出会ったとかそういう系です。 ちなみに作中で篁が持っていた分厚い本とは、命名辞典だったりします。『聞き人』は行く先々で色々な偽名を使うのですが、鹿人はネーミングセンスが極悪で、まともだったのは後にも先にも篁の名前くらいだったので、たまりかねた篁が代わりに名前を考えるうちに命名に嵌ってしまい、常に名づけ辞典を愛読している……というこれまたどうしようもない裏設定がありました。 実は『吉田賢司』も『高村孝明』も、私が赤ちゃん名づけ辞典で調べて考えたのですが、どういう意味があったかはポンと記憶の彼方です。 ちなみに篁自身の偽名は、自分の名前にあわせた『高村』姓をどこでも使います。 ●瀬川武雄 この物語の主人公であり、物語は彼の一人称で進んでいます。 最後に明らかになりますが、彼は幽霊。そういうパターンもよくあって、彼らは死んだことに気づいていませんが無意識に知っています。だから見たいものしか見えず、物事を都合よく解釈します。あとでよく見直してもらうと分かるのですが、彼の言葉に答えている人間はいません。これぞシックス・センス。 鹿人が彼にかなり詳しいところまで『聞き人』システムを話したのは、なるべく彼が疑問という名の未練を残さないようにするためです。 ……と言い訳しておきます。ああいう形でなければ本文中に説明を入れられなかったので、鹿人のセリフ妙に説明くさくなってます。汗 お粗末様でした。 |
07.09.27 ■ MENU |