序. “聞き人”という者がいる。 その名の示す通り他人の話を聞く者のことである。 だが、彼らが聞くのはただの話ではなく、また話をする者達もただの人間ではない。 聞き人が聞くのは死してもなおこの世にとどまり、行くべき『道』を見失って迷っている死人たちの声。 このような死人たちは“迷い人”と呼ばれ、聞き人はそのような迷い人の話を“聞く”ことによって迷い人の未練を昇華し、『道』へと導くのである。 また聞き人は、これから死にゆく人を見送る役割をも担うため、しばしば“送り人”とも呼ばれた。 この古の風習は時の流れと共にしだいに失われ、聞き人の存在もまた、長い時空のうちに葬り去られ人々の記憶から消えていった。 いま彼らを知るものはほとんどいない。 ――しかし血脈は人知れず細く細く現代へ伝わり―― そしてその血は今、ある少年へと受け継がれる――…… |
07.09.27
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